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「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

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5 「情け」を拾って歩く?(番外編)

 「情け」を拾って歩く?(番外編)

 『「うつ」の視線で「世の中」や「自分自身」を見つめ直してみたい』をテーマに日記を書いています。
 でも、最近は『言葉遊び』に過ぎるきらいがあるようです。
 そこで、今回は概念だとか理念だとかじゃなく、もっと身近なことを考えてみます。

 『いい加減にしろ。言葉で遊ぶなんて性的不能者のやることだ。』
 (「あしたカルメン通りで」森雅裕著)
 若きプリマ「鮎村尋深」を主人公にしたオペラを扱った推理小説です。
 その中で、相手役の北大の美術講師「守泉音彦」長々とした退屈な議論をぶち壊すときに使われる言葉です。

 そしてもう一つ。

 『この選挙が終わって、政治スタッフが決まり、新しい政策を考える、もちろんその過程でも飢餓への進行が止まることはありません、何の解決にもならないと言ったのはそういう意味です、食べるものがあるうちは、おしゃべりはいくらでもできます、解決の手段ではなく解決を実行するスタッフの選択だなどというおしゃべりが食べられればいいんですけどねおしゃべりはいくらでも生産可能ですが、食べられません。
 (「愛と幻想のファシズム」村上龍著)
 主人公鈴原冬二カリスマとする政治結社「狩猟社」が結成され、日本を代表する学者、官僚、そしてテロリストが結集し日本国が変わります。
 『限りなく透明に近いブルー』の受賞『芥川賞の権威を地に落とした』巷で有名な村上龍氏天才を見た作品です。

 「自分の考え方が、自由を失って難しい言葉や考え方に逃げ出してしまった」と感じた時に自分への戒めとして、よく思い出す小説の場面です。

 「おしゃべりは食べられません。」
 「言葉で遊ぶなんて性的不能者のやることだ。」
 最近の日記を振り返ると本当に耳の痛い言葉です。
 
 何故、急に、この番外編を書こうと思い立ったかと言いますと、今日、喫煙仲間の一人が、私が落として知らずにいた「定期券」を拾って持ってきてくれたことが原因です。

 6ヶ月間の「定期券」ですから4万円以上します。

 安心するのと同時に、凄くホットしました。
 肩の力が抜けていくのを感じました。

 独りで「うつ」と格闘して、『周りは悪意に満ちた善意に満ちている』などと言葉遊びをしている自分に気付きます。
 そして、先に引用した小説の場面矢継ぎ早に頭に去来し、非常に恥ずかしくなりました。

 「一体自分自身とは何か」
 これは、概念理念抜いて語ることは難解です。
 
 ですから、今回は一先ず、この命題を何処かに置いときます。

 そして、ありのままの自分の周りを見渡した時不図気が付きました
 ひょっとして私は、「『情け』を拾って歩いているんじゃないか」ということに。

 愛は惜しみなく与えるもの
 情けをかける。
 少し気持ちの良いことです。

 愛を奪い取る。
 情けを受ける。
 少し恥ずかしいことです。

 それでは、次はどうでしょう。
 愛を待ち続ける。
 いらぬ情けは受けぬ。

 自分は何か行動しているような錯覚を覚えますが、結局何もしていないことに気付きます。
 ただヒタスラに「愛」や「情け」を待っているだけのようです。

 ただ、待ち続ける。
 お昼の『連続テレビ小説』ならそれでも、面白い結果が待っているのかも知れませんが、きっと何も起こらずに『単に待っているだけ』という間抜けな結果に終わることでしょう。

 それに自分が『間抜け』だと思って耐えられる「人」もそれ程多いとは思えません

 それでは私は如何なのでしょう。
 与える程の愛など持ち合わせていませんし、『武士は喰わねど高楊枝』なんて気位は全くありません。

 妻からの愛情(?)上司からの温情周りからの同情。
 何時も何かに助けられ、他愛ない一言にスガって生きているような気がします。

 妻がニコニコしていると、温かいものを感じます。
 上司の他愛ない一言の励ましが、実は心の支えになっていたりします。
 周りの温かさ疲れを癒してくれることがあります。
 自分が人と関ることで、人から与えられるものは少なくありません。
 それを、1つひとつ拾って、本の少しかもしれませんが、仕合せを、そして安らぎ紡ぎ合わせています。

 ニーチェの『超人』の思索を忘れたくはありません。
 辺見庸の自分自身への『審問』を忘れたくはありません。
 『「うつ」の視線で「世の中」や「自分自身」を見つめ直してみたい』というのは私の永遠のテーマです。

 でも、あともう少しの間だけ「「人の『情け』を拾って歩いている」のも良いんじゃないかと思っています。


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